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国鉄がJRになってから30年が経過しまして、もう国鉄時代からの列車は絶滅危惧種状態になっています。それどころか、JRになってから登場した車両でさえ、引退したり転属したりしてしまった車両があります。例えば、京成スカイライナーが新しくなるちょっと前、成田エクスプレスが新車になりました。その前の車両だって、そんなに古いというわけではないのに。
国鉄時代の列車がどんどん淘汰されていく中で、未だに新車に恵まれない特急があります。特急踊り子です。
正しく言うと、スーパービュー踊り子がいるので、新車が来なかったわけではないのですが、踊り子を全部置き換えるには至りませんでした。
では、なぜ踊り子号は未だ古いまんまなのか。その話をする前に、なぜ列車は引退するのかを見ていきたいと思います。
「そんなの簡単だよ。列車が古くなったからじゃん。」
いえいえ、そんなに簡単な話じゃないのですよ。なぜかと言うと、列車は色んな部品の塊でして、部品だけを新しくするという手があるからなのですよ。なので、車両の老朽化以外にも理由があるんです。例えば、「部品を交換するぐらいだったら、新しい車両を入れた方がコストが安くつく」とかいう感じです。
これ以外に、列車が引退する理由は、主に次のような理由です。
1.新しいシステムに対応するため
前述の京成スカイライナーも、新しくなった理由は成田スカイアクセス線ができて、時速160km/h運転を行うためでした。それで、まだまだ十分走れるはずなのに、新車を入れたというわけです。
また、数を減らしつつあるのが6ドア車。こちらは、ホームドアに対応できないため、入れ替えが進んでいます。
とにかく、新線が開業したり、新システムができた結果、従来の車両では対応できなくなり、やむなく入れ替えすることになったというケースが考えられます。
2.レアな車両だったため
生産台数が少なかった車両は、他の車両と部品を共通化するのが難しく、保守上の脅威になりやすいのです。このため、早い段階で廃車になるケースが多かったりします。
例えば、中央線快速電車。こちらは製作費が高価だったためにあんまり生産されず、しかも故障率が高かったんです。この車両を使っているのは首都圏だと他に京葉線の一部列車しかなく、京葉線共々新車に入れ替わりました。
3.現在のニーズに対応できなくなったため
これは、お客さんから「この列車、古臭いね」と言われかねないといった理由も含みます。
それ以外に、小田急HiSEのケースがあります。もっと古いLSEよりも先に引退してしまった理由は、HiSEはハイデッカー車両ゆえにバリアフリーに対応できないためだそうです。
では、本題に戻ります。なぜ踊り子号だけ新車にならないのか。本当のところはJR東日本に聞いてみないとわからないのですが、高速バスが強敵にならないというのが大きいのではないかと思っています
首都圏を走る特急を、順番に見ていきましょう。まずは冒頭で説明した特急成田エクスプレス。こちらは京成スカイライナーのほか、各地を走るリムジンバスと競合関係にあります・・・ていうか、成田空港の開業当時はリムジンバスが一般的だったんです。
続いて、常磐線を走る特急ひたちと特急ときわ。こちらは東京駅から常磐道を経由して、常磐線各地を結ぶ高速バスと競合関係にあります。そのためか、JR世代の特急をさっさと引退させて、新車に入れ替えてしまいました。
続いて、房総半島を走る特急わかしお、特急さざなみ、特急しおさい。房総半島を縦断する館山道が整備されたうえ、東京湾アクアラインもあるため、都心からの高速バスが色々走っています。しかも高速バスの方が便数が多く、列車が負け気味だったりします。
続いて、中央線を走る特急あずさと特急かいじ。こちらは、新宿駅から中央道を経由する高速バスが出ています。しかも、富士急ハイランドに行くには、高速バスの方が便利だったりします。
・・・以上、ここまでがJRになってから新車になった特急です。共通しているのは、高速バスとの競合関係にあり、しかも高速バスが強敵なんですね。
では、新車に恵まれない特急は、特急踊り子以外にもう一つ、特急草津です。草津温泉へ行く高速バスはあるにはあるのですが、関越道が首都高につながっていないせいか、新宿行きでして。上野発の特急草津と競合関係になりにくかったりします。
で、本題の特急踊り子ですが、伊豆半島を縦断する高速道路がないためか、伊豆方面と都心を結ぶ高速バスは皆無なんです。この他、東海道新幹線も走っているのですが、乗車時間が1時間弱で、しかも伊豆方面に行くには途中で在来線に乗り換えないといけないので、新幹線のスピードメリットがあまり活かされないんです。
しかし、さすがにまずいと思ったのか、特急あずさと特急かいじを新車にした後、余った車両を特急草津と特急踊り子に転属させてしまいました。
特急踊り子って、ACコンセントが付いていないのは許すとして、末期の頃は内装の老朽化はハンパないレベルで、しかも観光メインの特急だというのに窓が小さく、もういい加減に新しくしないとまずいんじゃないかと思うレベルでした。ちょっと電車が古くなったら廃車にしてしまうJR東日本にして、あれだけ長持ちしたってことは使い勝手が良かったってことなんでしょうかねぇ。
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